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当館所蔵の絵巻作品の中でも,「をくり」(小栗判官絵巻)は,全15巻,全長が約324メートルにも及ぶ,近世初期の優れた大作として知られています。この絵巻を制作した画師は,江戸時代初期,題材や描法を自在に使い分けて独特の画風を表わし,とりわけ絵巻は濃彩で華麗な長大な作品が多いことで知られる,浮世又兵衛こと岩佐又兵衛勝以と伝えられ,この点においても注目されてきました。しかし,これまでその全貌を紹介される機会に恵まれず,旧御物の中でも,名のみが知られた名品でした。今回の展覧会では,説経節「をくり」を題材としたこの絵巻を,全巻にわたって,出来る限り,その物語の展開に従いながら,優れた描写場面を中心に紹介することとしました。 この絵巻「をくり」は,詞書が人形浄瑠璃の語り調子で書かれ,独特のリズム感で展開していきます。その展開にともなって登場する人物は実に生き生きとした表情で描かれ,執拗な場面の展開に見られる描き分けは,まさしく劇画的とも言えましょう。 このたびの展観を一つの機会として,今後,この作品が説経節「をくり」について,また岩佐又兵衛について,様々な分野で新たな資料として研究されると同時に,多くの方々に,絵巻のおもしろさとその魅力を鑑賞していただければ幸いです。 展覧会図録(PDF形式:71.1MB) |